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昭和三十六年 七月号   

2012年 03月 07日

風吹けばみかんの花が匂ひくるリフトに乗りて山をゆく時

十二人が二列に並び綱を引く久能山よりみゆる浜辺に

切妻のわらぶき屋根は倉庫とぞ足高き台の上に建てらる




摘果しつつりんごに袋かけてをり肩も痛かりくびも痛かり

目ばかり出して顔をつつみし乙女等がよく話すなり袋かけつつ



朝な朝な挿し木のバラをのぞき見る赤く小さく芽のふくらむを



美が森つつじの間わけわけて児等は蕨をさがしゐるなり

所どころ枯れ枝白く見えてゐき天然記念物のこの大つつじ



# by hahanamiko | 2012-03-07 21:30 | 美知思波 | Trackback | Comments(0)

昭和三十六年 六月号   

2012年 03月 02日

小山田に水はられをり若緑もえたつ山の影を映して

台風に傾きしままの大榎春きし梢葉の茂りをり



畳する足音のこしてこの部屋の帯戸が開き君現われぬ

琴の音のもるる江利川先生の門前歩く孫をまもりつ

左手に重み加はりてきたりけり英幸かろきいびきたてゐる

雨蛙潜みゐたり棕櫚の葉の重なり合ひてゐたるところに



幾年を心通ひし人と居り今日を限りの会議の席に

# by hahanamiko | 2012-03-02 19:00 | 美知思波 | Trackback | Comments(0)

昭和三十六年 五月号   

2012年 03月 01日

相模野の林の中の寮社にて今宵は独り寝るらむ順子



順調に育ちて二十五日目ぞ拳を口にする孫英幸は

湯浴みさせる吾が手の上におとなしく目を開き口をつぐみいるなり

一日の半を孫にかかわりてあわただしかり吾が明け暮れの



吉野山もかくやあるべし等云ひて登り行くなり山のそば路

太き幹の所々に芽を吹きてそこにも咲けり一層の花

目の下にきほひ流るる桂川背音はひびく山の上まで

雪消水富士より流れ下るらし桂川の水白くにごれり

雪しろに濁りて早き桂川溶岩あればしぶき立てつつ

健脚と云はれて先にたちてをりあへぎて登る友を呼びつつ



# by hahanamiko | 2012-03-01 21:45 | 美知思波 | Trackback | Comments(0)

ジャック死す  

2012年 03月 01日

死期すでに近くなりにしか終日を咳きつつ小屋にこもれるジャック

名を呼べば寝ねたるままに尾を振れる毛並みもつやもおとろへ見せて

固きこぶ腹に三つあり犬の老衰の表れと人等云います



庭隅に土盛り上げて丸き石上に置くなりジャックを埋めて


# by hahanamiko | 2012-03-01 21:35 | 雑詠 | Trackback | Comments(0)

昭和三十六年 四月号   

2012年 02月 28日

折々に波におどるは何魚ぞ吾が行く船の右に左に

大島近く波のうねりの高まりぬいささかの風たつと見し間に

頭にのせて物を運べる大島のおみなは老ひて腰まがらずと

髪を包みモンペを着けて登るなり砂漠より来る風の強きに

立ちのぼる煙のうづが白雲の如くただよふ山上の空に

帰りには椿林の中をゆく残りの花を眺めながらに

大町桂月ゆかりの地とぞ赤松の林のなかにわらぶきの家

朝々を庭に来て鳴く鶯が今朝も来てをり樫の梢に


# by hahanamiko | 2012-02-28 22:50 | 美知思波 | Trackback | Comments(0)

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