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カテゴリ:雑詠( 26 )

昭和三十六年 八月

女児生ると聞きて来りし病院のベッドに洋子は眠りゐにけり

百三十グラムの乳を一息にのみて和子は吾がうでに眠る

吾が家に来たりて十日下ぶくれになりて可愛くなりたり和子



三つの山三つの谷を埋めなしてゴルフ場建設いま盛りなり

六道地蔵尊二十五菩薩曽我兄弟虎御前の墓道沿ひにあり

芝山の芝をくぎりて若き杉うねなして見ゆ長尾峠に
by hahanamiko | 2013-01-16 18:19 | 雑詠
折々に波はね返す魚あり吾が行く船の右に左に

大島近く波のうねりの高まりぬいささかの風立つと見し間に

初島ははるかになりて空と海ひと貫にして蒼あおつづく

この島の重要産物のひとつとぞ島をおほえる細き竹原

はるばると椿を見むと来たりしに二月十九日半ば散りたる

砂漠より吹きつのる風強ければモンペを着けて登らむとする

右に見る錦ヶ浦は朝の陽に波かがやきて果てもあらず
by hahanamiko | 2012-09-24 16:55 | 雑詠

ジャック死す

死期すでに近くなりにしか終日を咳きつつ小屋にこもれるジャック

名を呼べば寝ねたるままに尾を振れる毛並みもつやもおとろへ見せて

固きこぶ腹に三つあり犬の老衰の表れと人等云います



庭隅に土盛り上げて丸き石上に置くなりジャックを埋めて
by hahanamiko | 2012-03-01 21:35 | 雑詠

・・・・・

茶褐色の柱のつやを見てゐたり風邪にて寝ている床の中にて

とろろ芋摺りつつ想ひ浮かぶなり山に掘ります生更先生

スキー負ひていそいそと洋子いでゆきぬ嫁すべき家のまどひに入りて

志賀高原の雪にまろびてゐるならむ夫となるべき人と並びて

雪焼けのほほあからめて帰り来ぬ私だけがころびましたと

全学連暴動の記事読みつつぞその父母の痛みを想ふ

風つのる夜半の街に着ぶくれて夜警の夫はいでてゆきたり

さんざめく笑いの中に笑はざる人二人おり席を並べて

天井の焼夷弾の穴寝てゐつつ眼ひらきて見てゐたりけり
by hahanamiko | 2012-02-05 20:13 | 雑詠

成人式に参加して 

着かざりて乙女等は何を思ふらむ華やぎ満てる成人式場

表面の美を云ふなかれその瞳の輝きを見よとたれか云ひたり

母吾等の合唱の声つたなくも君等をほぐと聞き給ふべし

成人を寮舎にありて迎えたる智子を想ふこの式場に

この式に智子は居らず成年を寮舎にありていかに迎えし
by hahanamiko | 2012-02-05 20:00 | 雑詠

駒井様宅にて歌会

陽あたりよき部屋に産着を縫ひいます美知思波歌稿持ちゆきしとき

柿の皮くるくると膝に落としゆく君が手先の動き見てゐる

義歯にて不器用に食ぶる次郎柿甘ければ又手を伸ばすなり

君が庭より分かち給へるガーベラの花咲きつぎて夏となりけり

夕さればビニールかけてガーベラの残りの花を守らむとする

鳶二つしばらく舞ひてゐたりしが連れ立ちて消ゆ西の雲間に

天の川白々見へて満天の星座きらめくプラネタリューム

かすかなる鼾きこえぬ仰向きてプラネタリューム見ていし時に

この庭に智子も居らむ青山学院に添ひたる道をバスに過ぎたり

友より賜ひしきんせんか並み植えにけり診療室の前のひだまりに
by hahanamiko | 2011-11-20 21:46 | 雑詠

洋子婚約成る

平野屋に釣りせむと云いて婚約の二人は並びいでゆきたり

美知思波の歌稿にむかゐし時にきりきりと腹痛くなりたり
by hahanamiko | 2011-11-20 21:29 | 雑詠

遺児と靖国神社参拝

青銅の大き鳥居を入りゆけば鳩は群れいる庭いっぱいに

條立てて清められたる玉砂利に落ち葉しきりなり

百五十人の遺児寂として昇殿す神殿風冷たい朝

父を奪った戦争が憎しと声をのむ遺児代表の言葉に哭けり

秋桜咲きてゐにけり靖国の宮の内苑ふかきところに

かわらけに神酒つぎくれるうら若き巫女の手白く美しかりき
by hahanamiko | 2011-11-20 21:25 | 雑詠

昭和三十三年

まだきより田に響きくる拡声器なべては水のことばかりなり

焼け畠に七月の陽はきびしくてかさかさと鳴るもろこしの葉が

二十日鼠のはだら子を畦の上におき殺してがなく見ていたりけり

換金作物転換の話もはらなり乏しき水に田を植えながら

十三時間労働すでに幾旬ぞ鬢も伸びたり日焼けし顔に

毒虫に刺されし足がひりひりと痛みやまざり泥の中にて

雨を待つ人々の願いむなしくて空あかあかと暮れそめにけり

ふやけたる足に小砂利をふみながら暗みそめたる野路を帰る

繭米野菜すべてを人の定める値段にて売らねばならぬ百姓

教職を一筋の道と学びたる若き等の行く手いかにせよとや

職無くば家にしありて良き妻となるべき業にいそしめ洋子

とくほんを両肩にはりひねもすを横たわりいて美知思波を読む

すだれ越しの風を受けつつ式台に蟻忙しく動けるをみる

時折はとどまりて触手振りながら何を探すか黒蟻二匹
by hahanamiko | 2011-09-07 22:42 | 雑詠

蜜柑の皮ひとつ

山吹の根株のかげに見つけたり二輪咲きたる紫すみれ

蜜柑の皮一つ浮かべてゆるやかに流るる川の岸を行くなり

荒川の洲が耕され青々と麦か菜種か育ちゐるなり

総会の準備ようやくととのいて恙なく任期終えたる我等
by hahanamiko | 2011-02-21 15:12 | 雑詠