母の詠草


by hahanamiko
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千代田湖畔にて

細竹にて幼児が四人釣りており千代田湖畔の西の浅瀬に

九年前雨寒かりしこの湖に逝きませし娘の師を想い出づ

人むるる処はさけて草長きところを登る草に縋りて

白山の白き山肌染めなして紫つつじ今さかりなる

台風の夕ごり残れる崖道に半ば埋もれし春蘭を掘る

新聞紙顔にひろげて夫と娘等頂上の岩に長々と寝る
by hahanamiko | 2010-01-27 15:57 | 雑詠

家にて雑詠

筆先に卵の白身ぬりにけり万年青の細き一葉一葉に

孫の小さき手に引かれゆく日に幾度菓子入れてある戸棚の前に

守りしつつ書読みおれば背中より英幸は眼鏡をとりあげるなり

亡母ありし時のままなる燕の巣ふたつありけり雛もまじりて

あめ色にすきとほりたる熟蚕の冷たく丸き感触うれし

群がれる赤蟻に首ふりながら蚕がひかれゆく土間の隅より

猫の手にいささか勝ると夫と吾連れ立ちてゆく夫の生家に

若き等は街に住まいて老い近き弟夫婦蚕飼するなり

農の尊きを云いてうからを嫁がせし父なり逝きて十五年経つ

父母の墓前に香をまひらせて蚕上ぞくの手伝いはじむ

腰直く自転車に乗りてきましたり八十五歳になりし舅上

何時までもまさきくいませただ一人残り給ひし舅上なれば

二皿のトマトを食べてなお欲しと英幸は卓をゆすりてせがむ
by hahanamiko | 2010-01-27 15:51 | 雑詠

旅のつれづれ

上高地

大正池を見下ろす頂上の岩に座す松あれば松に陽をよけながら

薪とりの媼三人きねたる薪に座り茶を飲みており

雑木山の雑木は切られ紅の木瓜地に這へり頂にまで

木瓜の実の小さきが見ゆ紅にこごりて咲ける花の蔭より

楓の枝にうす紅ひの珠がみゆ幼虫こもろと云えるその珠

鶯の声しきりなる峠道蝉も聞こゆる近きところに

水溜りにうつりていたる吾がかげの髪のみだれを見ていたりけり




諏訪湖

足うらに触るる小石の感触がうれしかりけり片倉の湯に

遊覧船出発を知らす声聞こゆ澄み極まれる諏訪湖の上に

湖岸に打ち上げられし鯉ありて鱗が光る午後の陽射しに




天竜下り

段丘のアカシアの蔭に点々と赤き屋根みゆ上久形村

檜笠かぶりて釣りをする人あり橋近く巨大なる石あるところ

右手段丘の上に飯田市あり小京都なりとガイドは云えり

このあたり鳶多きらし流木に動かざるあり輪をえがくあり

かさこそと落ち葉を踏みて天竜の流れを下にしばらく歩く

船はいま峡に入りたり両岸のそばだつ岩に茂るアカシヤ

市田駅に天竜五葉と云うありき針長くして濃きみどりなる

九十六人のみたましづめて成りしと小佐久間ダム見る深き想ひに

二十メートル減水の跡明らかなりダム巡らせる石垣の上に
by hahanamiko | 2010-01-11 23:04 | 雑詠
やわらかく桑の萌へたる山畠のなかを登れリ金子峠に

山畠の細き路ゆき桑の下に半開きし蕨折りたる

甘酢ゆき匂ひただようひとところ山つつじは紅ひの色に咲き咲く
by hahanamiko | 2010-01-10 22:52 | 雑詠

浜名湖

浜名湖は海につづきてはるかなり風立てばたちまちうねる大波

鉛色に光りてうねる湖遠く漁りの船の小さく見ゆる

甲板に佇てばはげしく顔を打つ風こころよし潮をふくみて
by hahanamiko | 2010-01-10 22:43 | 雑詠