「ほっ」と。キャンペーン

母の詠草


by hahanamiko

<   2010年 09月 ( 3 )   > この月の画像一覧

昭和三十二年九月号

親指の爪に黒々と炎のあと残りて脚の痛みは去らず

折々はこごみて脚をさすりつつ厨に朝の支度するなり

虫喰いの柿あかあかと日に光るようやく雨の上がりたる朝

二株の珊瑚樹ありて赤き実が房に実れリ公害の庭に

語るだけ語りて心晴れたるか三日目に母は帰りゆきたり

藻のかげに黒の出目金が浮き上がるひと夏かけて泳ぎしものを

みだい川の水せき止めて落としたる滝のしぶきが作りたる虹

水滴の音絶え間なき隧道を歩きゆくなり鳥肌たちて

山あじさいの紫の花盛りなり潅木茂る山のはざまに

肩越しにのぞきつつ離れて眺めつつ「両国の花火」見飽かざりけり

一筋もゆるがせにせず張りてあり菊の花弁の細かきこより

あふれいるひとの褒め言よそにして清は今日をいずくに居らむ
by hahanamiko | 2010-09-28 16:52 | 美知思波

昭和三十二年九月号

渓間より湧き立つ霧がおもむろに這い登り行く暁の山を

河口湖も富士も濃霧におほわれて虚しき御坂峠路に侘つ

四合目を過ぎし頃より一様に苔をつけたり栂も落葉松も

悉く下に向かひて枝を張るそうしかんばの林に入りぬ霧にぬれつつ

一瞬の晴れ間を仰ぐ山頂に青き空あり白き雲あり

倒れたるままに朽ちゆく大木に寄りて茂れる深山石南花

なだらかに樹海ひろがる目の下を見つつ飽かなく中道に侘つ

いつしかに林はつきていたどりの群落が見ゆ目の下遠く

「此処が山女の釣り場です」と運転手指さす淵をのぞき見しかな

塩川の流れにそひて幾曲がりバスは揺れつつ増富にゆく

木がくりに橋が見えをり通仙峡と書きし木札の立ちたるところ

「サイダーの味がする」等云い合いて増富の湯を飲みにけるかな

瀬を渡り岩に登れば湯の宿の縁にて友がカメラ向けおり
by hahanamiko | 2010-09-27 22:28 | 美知思波

大菩薩峠登山 家族にて

吾等四人の足音のみの山中に何の鳥ぞも折々きこゆ

渓間にもゆく手にも白きうどの花生更先生に見せたしと思ふ

名は知らず紫の花群れ咲けり富士見平の草原のなか

ころばせつつ云いましき生きむがための戦ひですと
by hahanamiko | 2010-09-05 22:09 | 雑詠