母の詠草


by hahanamiko
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昭和三十三年五月号

濠に面して散り残りたる一樹ありその木の元にまろく座をしむ

旗印も毛槍も金具光らせて調えられぬ神殿の前

指先を緑に染めて外苑の芝生の土筆積みにけるかな

畠中に侘ちていませる地蔵尊白き涎掛け幾枚もして

麦青き甲斐の平らを一望に岩に座りて昼の飯食す

黙々と岩に音立つる四人ありここは片山石切り場にて

水澄める小川の底に白き腹見せて沈めり鮒が鱒が

下肥のにほひしてゐる畑あり玉葱のうね青々として

午前五時漸く夫は帰り来ぬ重油焚く村めぐりめぐりて

霜害対策甲斐なかりしと手袋ぬぎつつ夫はぽつりと云えり
by hahanamiko | 2011-02-27 23:44 | 美知思波

蜜柑の皮ひとつ

山吹の根株のかげに見つけたり二輪咲きたる紫すみれ

蜜柑の皮一つ浮かべてゆるやかに流るる川の岸を行くなり

荒川の洲が耕され青々と麦か菜種か育ちゐるなり

総会の準備ようやくととのいて恙なく任期終えたる我等
by hahanamiko | 2011-02-21 15:12 | 雑詠

昭和三十三年四月号

恐れつつ取りし受話器に智子合格の言葉まさしく聞こえきにけり
by hahanamiko | 2011-02-21 15:09 | 美知思波

昭和三十三年三月号

雪解け水一面に氷りたり伊勢小学校北側の庭

四、五人の児童等が滑りいたりけり校舎の裏の厚き氷に

板塀にしたたか泥をはねかけてトラックは隣の前に止まりぬ

女等よ政治によろめくことなかれ強く言いましし高山しげり

物云えば唇寒し云はざれば腹のふくるるどちらも道理

八ッ嵐顔に受けつつ荒川の土手急ぐなり母に行くべく

鍬かたげ亡父と歩みし所なり今枯れ芝をふみて侘つ路

六人のはらから集い古里の炬燵に更かす母をかこみて

幼等は漸く寝てしまひたりうから六人語り明かさぬ
by hahanamiko | 2011-02-16 22:56 | 美知思波

昭和三十三年二月号

逝きまして十有余年教え子の手にて成りたる歌集「老松」

眼差しの亡父に似ませるみ写し絵笑みていませり其の巻頭に

脇門のくぐりの鎖響かせて夜を訪ひたることもありけり

方眼紙今宵も出して診療室の図面引きをり夫と佑幸

うから六人映画を見むと月まろく風の冷たき町を行くなり

さわやかに山脈の線うかびたり夕明かりする空をくぎりて

筆談の煩わしさにも堪えましてさきくしいませ江利川先生

三百の賀状来たりぬその中に宛名のみなる一枚もあり

青銅の裸枝差し交わす空の淵に影をもたざる雲の寂けさ

緩々と行く我にすぐ追いつきてその歩きざま夫はしてみす

夜更けて看護婦ら物を洗ふなり物を洗ふに必ず唄ふ
by hahanamiko | 2011-02-14 23:27 | 美知思波

昭和三十三年一月号

三毛猫がうづくまりをり白菜を干しひろげたる筵の上に

漬菜終えて塩に荒れたる手を洗ふ夕かたぶける厨の内に

白菜大根人参生姜切りまぜて即席漬けも鉢に漬けたり

学びいる娘と並びいて衣を縫う仕掛け花火の音を聴きつつ

土屋眼科の畑のすみに残りたる枯れほほけたる薄一群れ

積極性なしと笑はば笑うべし吾は争うことを好まず

樹の上に鋸鋏持ちゆきて柿剪定にもはらなる夫

夫の切りし柿の小枝を束ねをり冬日の当たる裏庭にいて
by hahanamiko | 2011-02-12 23:17 | 美知思波

昭和三十二年十二月号

三十人一日侘ちて募金せり一万七千六百六十円

お願いしますと頭を下げし吾が前を通り過ぎたり向井先生

着飾りし人はおおむね横を向き乙女等も関心持たざるらしき

里帰り婦人の持てる悲しみに妻なればこそ我等も泣かゆ

再びは帰り来ることもなかりべし恙あらすな中国人の妻

一ヶ月一玉あての綿を買う計画を来年は立てむと思ふ

愛宕町に際立つ白亜三層の校舎ようやくかたち成りたり

人工衛星の話もはらに挑みいる乗せられし犬のあはれも云いて

ようやくに伸びたる髪を輪に止めて順子は少し大人びにけり

鈴なりの柿が西日に光をり櫛形町の農家の庭に
by hahanamiko | 2011-02-11 16:26 | 美知思波

昭和三十二年十一月号

ハタキをかけつつ智子が唄う子守唄眼つむりしままに聞きおり

枕べに幾冊の本積みおきて読みつつ眠り読みては眠る

折々はガラス戸鳴らし無花果の広葉をゆりて午後の風吹く

帯雲も積乱雲も金色にふちどられつつ北に動けリ

落葉焚く下よりみみずが這い出でぬ棒の先にて引き出してやる

一筋の道を歩みて三十余年夫に陽びたり有功表彰

中間テスト明日は終わると夜もすがら咳きつつ順子は机に寄れリ
by hahanamiko | 2011-02-11 16:11 | 美知思波

雲峰寺

老杉の間の石段百五十登りてそこに仁王尊存す

檜皮ぶきの屋根なだらかなる曲線を仰ぎてしばし本堂の前

天然記念物桜の巨木花あらば見事なるべし庭をうずめて
by hahanamiko | 2011-02-11 16:00 | 雑詠

天竜下り

水底の石にもふるる処あり天竜川を下る川船

さざれ石洗ひつつ流れよる水の広らなりけり天竜河原

岸遠く段丘つづきアカシヤの緑まされりその頂に

傘の産地阿の島と云へるあたりなり鳶舞ひており水すれすれに

おだやかに下ると見しがたちまちにしぶきははねる巨き岩根に
by hahanamiko | 2011-02-11 15:54 | 雑詠