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刻々に冷えゆく指をにぎりつつ魂よびかえすすべなかりけり

不撓不屈の性持ちてゐし母なりきまざまざと見る節立ちし指に

体温のいまだ残れる背を胸を清めまゐらす熱きタオルに

泪のまま見てゐたりけり母の棺に次々と釘の打たれゆくを

母を焼く煙はすでに立ちはじむ愛宕の山の空ひとすじに

頭骸骨のみ僅かに形とどめたる灰の中より御骨を拾ふ

愛用の手提袋が其のままの形に黒く残りゐるなり

やすらかに旅立ち給へ西方浄土蓮華のみ座に父待ちまさむ

母が手織りも幾枚かまじりゐて遺品分けする吾れ等泣かす

すでにして死期を知りしか整然と整ひいたり母の品々

老いの手に縫い上げにけむ着物羽織しつけの糸の白さわやかに

肌着をも一枚づつは頂かむ母の香りのしみゐるものを

たらちねの母いまさねば口数も勘くなりて六人座る
by hahanamiko | 2011-03-06 23:25 | 美知思波

昭和三十三年六月号

諏訪の湖広々として静かなり岸近くゐる小さき漁船

あの山も落葉松林この山も落葉松林萌えたつ落葉

千曲川くねりくねりて流るるを小諸の城の高きより見る

枯れ葦の群立つかたに榛名湖の青はさやかに見えてきしかな

裄丈の長きどてらにくるまりて夜は伊香保の町に出でたり

鉄筋コンクリート百五十尺の御高さ美女にて存す高崎観音

水澄める秩父長瀞ささ舟はゆるく下れリ吾らを乗せて

船ばたに侘ちて掉さす船頭の日に焼けし腕しみじみ見る

みやげ物の店に並びし石細工蝦蟇猿河鹿そして文鎮

幾年ぶりのおごりと云はむ夫と子を家に残して旅行く我等
by hahanamiko | 2011-03-01 17:42 | 美知思波