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十匹の金魚つぎつぎ死にゆきて残りしひとつ鉢に動かず

ふんわりと富士にかかれる白き雲荒れたる国にかかわりもなく

地の惨禍黒くしずめる山梨の空にさやけし十日の月は

おそろしき自然の力知らしめて台風は去りぬ忘れしごとく

台風去りし盆地の朝を旋回するヘリコプター飛行機屋根すれすれに

屋根に這ひて割れし瓦をなほしおり又降り出せる小雨のなかを
by hahanamiko | 2011-10-28 18:50 | 美知思波
バスに行く富士二合目の崖下に既に葉となりしうどの幾株

こけ桃の花の可憐をいひあいてむらがり咲けるかたはらに侘つ

ふり仰ぐ頂は澄みきわまりて雪渓に陽のかがやくを見つ

所々に紙屑ありて大いなる蝿群がれり小御嶽あたり

松葉酒のびんが並びてゐたりけり老人ホームの庭の陽なたに

養老院にて結ばれたりし夫婦とぞ一つの部屋にひっそりと居き

子供らの歓声あがれる夫の土産卓上にある一房のバナナ
by hahanamiko | 2011-10-23 11:46 | 美知思波
みずみずしく茂れる羊歯を折りしきて先ず取りいだす握り飯包

天女山の頂に侘ち向かひたる八ツの峰々余りに近し

美し森キャンプ場見ゆ白樺とつつじと赤きバンガローの屋根と

爪の中につまりし土をもてあます二株ばかり鈴蘭堀りて

村に入れば蚕座のにほひしきりにて上簇すでに終わりたるらし

父も母もすでに在まさぬふるさとの家に座りて迫りくるもの

土ほこり捲き上げながらバスは行く登美の高地を藤井たんぼを
by hahanamiko | 2011-10-23 11:34 | 美知思波
木がくりの峪あひの水にごりいて雨しきりなり笹子の道は

犬吠崎の灯台の灯を窓に見る磯屋ホテルの二階に居りて

潮騒の音が聞こえてゐるなりき夜すがら浅き眠りのなかに

なめらかなる石重なれる磯に侘つ折々波に裾をぬらして

石を上げて小さき蟹を追ひたりき朝の飯待つ其のひとときを

瑞々と若菜萌えたち丹の色の鳥居はえたり鹿島神宮

七不思議と云へる池あり鹿島神社の森の奥戸に澄みきわまりて

水郷はすでに田植えが終わりゐて白鷺歩む植田の畦を

ゆるやかに水流れゐて小さなる舟おかれたり真菰のなかに

バスに行く北浦の湖の長き橋右手に鴨の遊ぶを見つつ
by hahanamiko | 2011-10-22 21:08 | 美知思波
牡丹桜たわわに咲きゐたりけり柿の若芽の萌えたつ中に

調教師が赤きカラーをつけゐたりライオンに鞭を使ひゐるとき

まだきより鶯の声しきりなりいねたるままにしばらくきかな

つる薔薇の若芽は風にひるがへりひるがへりつつ陽に光をり

十二単衣もロープデコルテモかがやかに身につき給ふ美智子妃殿下

拍手すれば犬も満足するらしく競ひて小さき車引きをり

かかるきびしき生きもあるなりライオンを虎を鞭にて使ふ若者
by hahanamiko | 2011-10-22 19:45 | 美知思波
煙突の赤あざやかに写したり和み流るる荒川の水

初対面の二人が何を語るらむ肩を並べていでゆきしかど

この後は二人の意思にまかせむと父母吾等部屋にゐのこる

桃にせむかぶどうにせむか改植の相談受くる若き甥より

右手もて左の肩をもみほぐす歯痛きびしき夜をさめゐて

左のはれ上がりたるこめかみに肩にトクホン貼りてたへおり

壁を落とし畳を上げて居るところなき迄部屋に積み上ぐ

頭領の木槍よろしくシャンシャンと手を打ちて酒席たけなはとなる

江利川先生の祝詞まことに有難し補聴器つけて性質侘ち給ひたり

歯の痛みうすらぎたれば寝たらひて夫と工事見上げて侘てり

二階の部屋は若き二人の物とせむ等云ひあいて夫と見てをり

診療室のかたちようやく定まりて電気水道の工事はじまる

対岸の州にうねなせる麦の青ゆるるを見つつ土手を行くなり
by hahanamiko | 2011-10-21 16:41 | 美知思波
五流の旗風になびかせ葬列はくねりて続く和田の野路を

深々と苔を踏みつつ法泉寺の広き山内を墓地に入りゆく

幼き日実を拾ひたる椿ぞと夫は撫でゐるその木の幹を

法泉寺山のお墓のひとところ吉田家一族の石碑が並ぶ

勝頼公の墓に並びて法泉寺開山和尚月舟の墓

梅の実の収入が今この寺を支ふると檀家総代の言
by hahanamiko | 2011-10-20 08:42 | 美知思波
数の子もたこも刺身も高くして吾らの家に正月がくる

りんご箱に米菓子りんご餅などと詰めて荷造り漸く済みぬ

自転車に乗りて年始に来ましたり八十になりて若き舅上

睡蓮の陰に沈みてゐる金魚見てゐたる時動かざりけり

独り居の昼は安けし餅三切れ焼きて厨にひるげを済ます

昨の夜舞ひし風花白々と庭の冬菜の上に残れり

笑い声たかく上がりぬ先生の作りし歌に酷評ありて
by hahanamiko | 2011-10-18 22:58 | 美知思波
一すじの道をつらぬき給いたる喜びの日ぞ吾も侍らん

折々は眼鏡ぬぐいていましたり祝いの席の生更先生

甲斐の文化いよいよたかめさせ給え百歳までもながらへまして

彩なして紅葉燃え立つ地獄谷ロープウェーの窓よりのぞく

石垣作りの苺は花の盛りにて丘の日当たる斜面に続く

さやさやと風吹き亘る朝の山蜜柑は実る頂にまで

空と見し山のかなたは海なりき遥々として白く光れる

羽衣の松を左に美保の海波打ち返す浜を歩めり

海原を薄紅に染めなして日はかたむきぬ蜜柑の山に
by hahanamiko | 2011-10-18 22:33 | 美知思波
今市の町を過ぐれば軒ごとにここだく乾せり赤とうがらし

眠り猫はこれなりと君指差しぬ成程小さきこの眠り猫

ようやくに雨上りたるいろは坂もみじはもゆる山々渓々

白樺も松も紅葉に色そえて男体山は云うばかりなし

耳をすませば河鹿の声も聞こえくる足長々とひたる湯舟に

荒川の中洲をうめし薄の穂ほほけてゆるる風のまにまに
by hahanamiko | 2011-10-16 20:42 | 美知思波