母の詠草


by hahanamiko
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

タグ:婦人会等 ( 15 ) タグの人気記事

昭和三十六年 九月号

小淵沢より歩きたる十五分ほこりかむれる草の道なり

酒もジュースも池に沈めて口すすぎ手を洗ひたり滝の清水に

拝殿に吾等並びて紅ますのゆわれ聞くなり農組合長に

置物かと思ひたりけり神殿の前に動かぬ蟇が一匹

胸にズボンに尿されつつ笑ふなり蟇をとらへて抱き来し人が

たしかなる手ごたえありて釣上げし紅鱒が芝の上に跳ねゐる

あらき歯をおそれ乍ら針をとる一尺ほどの肥えし紅鱒

孫二人にあせもを出さぬがそのことが夫と吾れとの仕事のひとつ

和田山のキャンプの一夜明けし時君が夫君の訃報とどきぬ

二十人があわただしくも下山する露のままなる百合を束ねて
by hahanamiko | 2013-01-16 18:34 | 美知思波

昭和三十六年 六月号

小山田に水はられをり若緑もえたつ山の影を映して

台風に傾きしままの大榎春きし梢葉の茂りをり



畳する足音のこしてこの部屋の帯戸が開き君現われぬ

琴の音のもるる江利川先生の門前歩く孫をまもりつ

左手に重み加はりてきたりけり英幸かろきいびきたてゐる

雨蛙潜みゐたり棕櫚の葉の重なり合ひてゐたるところに



幾年を心通ひし人と居り今日を限りの会議の席に
by hahanamiko | 2012-03-02 19:00 | 美知思波

昭和三十五年 八月号

畔道にござ敷きならべひろげ食す流るる水に足をひたして

畦草のしげりをぬきて彼岸花ところどころに咲きいでにけり

稲の色青み来たりて乱れ葉のゆれやわらかに朝の風ふく

水際に麻菰の茂るひと所夕陽は光る波のまにまに

一枝に五つの蕾咲きそめて壷に重たし山百合の花

紺がすりに赤き帯して乙女等が田植えせりけり二十年前は

音たてて流るる水に沈めたるジュースを畦に侘ちて飲みたり



いづれ良しと日定むべき右左みなそれぞれの理わりありて

友情を打算にかへよと云ふ人あり吾は黙して帰り来にけり

声荒く満座に人を辱しむいつもながらの横車にて

しみじみと独りなりけり集まりて人等の話題聞きながらゐて



吾が呼べば物憂げにジャック首上げて尾を動かせり牡丹のした

岸さんの血が絨毯に染みたりと云ふ記事を読む顔よせ合ひて
by hahanamiko | 2012-02-13 15:32 | 美知思波
バスに行く富士二合目の崖下に既に葉となりしうどの幾株

こけ桃の花の可憐をいひあいてむらがり咲けるかたはらに侘つ

ふり仰ぐ頂は澄みきわまりて雪渓に陽のかがやくを見つ

所々に紙屑ありて大いなる蝿群がれり小御嶽あたり

松葉酒のびんが並びてゐたりけり老人ホームの庭の陽なたに

養老院にて結ばれたりし夫婦とぞ一つの部屋にひっそりと居き

子供らの歓声あがれる夫の土産卓上にある一房のバナナ
by hahanamiko | 2011-10-23 11:46 | 美知思波
今市の町を過ぐれば軒ごとにここだく乾せり赤とうがらし

眠り猫はこれなりと君指差しぬ成程小さきこの眠り猫

ようやくに雨上りたるいろは坂もみじはもゆる山々渓々

白樺も松も紅葉に色そえて男体山は云うばかりなし

耳をすませば河鹿の声も聞こえくる足長々とひたる湯舟に

荒川の中洲をうめし薄の穂ほほけてゆるる風のまにまに
by hahanamiko | 2011-10-16 20:42 | 美知思波

昭和三十三年六月号

諏訪の湖広々として静かなり岸近くゐる小さき漁船

あの山も落葉松林この山も落葉松林萌えたつ落葉

千曲川くねりくねりて流るるを小諸の城の高きより見る

枯れ葦の群立つかたに榛名湖の青はさやかに見えてきしかな

裄丈の長きどてらにくるまりて夜は伊香保の町に出でたり

鉄筋コンクリート百五十尺の御高さ美女にて存す高崎観音

水澄める秩父長瀞ささ舟はゆるく下れリ吾らを乗せて

船ばたに侘ちて掉さす船頭の日に焼けし腕しみじみ見る

みやげ物の店に並びし石細工蝦蟇猿河鹿そして文鎮

幾年ぶりのおごりと云はむ夫と子を家に残して旅行く我等
by hahanamiko | 2011-03-01 17:42 | 美知思波

蜜柑の皮ひとつ

山吹の根株のかげに見つけたり二輪咲きたる紫すみれ

蜜柑の皮一つ浮かべてゆるやかに流るる川の岸を行くなり

荒川の洲が耕され青々と麦か菜種か育ちゐるなり

総会の準備ようやくととのいて恙なく任期終えたる我等
by hahanamiko | 2011-02-21 15:12 | 雑詠

旅のつれづれ

上高地

大正池を見下ろす頂上の岩に座す松あれば松に陽をよけながら

薪とりの媼三人きねたる薪に座り茶を飲みており

雑木山の雑木は切られ紅の木瓜地に這へり頂にまで

木瓜の実の小さきが見ゆ紅にこごりて咲ける花の蔭より

楓の枝にうす紅ひの珠がみゆ幼虫こもろと云えるその珠

鶯の声しきりなる峠道蝉も聞こゆる近きところに

水溜りにうつりていたる吾がかげの髪のみだれを見ていたりけり




諏訪湖

足うらに触るる小石の感触がうれしかりけり片倉の湯に

遊覧船出発を知らす声聞こゆ澄み極まれる諏訪湖の上に

湖岸に打ち上げられし鯉ありて鱗が光る午後の陽射しに




天竜下り

段丘のアカシアの蔭に点々と赤き屋根みゆ上久形村

檜笠かぶりて釣りをする人あり橋近く巨大なる石あるところ

右手段丘の上に飯田市あり小京都なりとガイドは云えり

このあたり鳶多きらし流木に動かざるあり輪をえがくあり

かさこそと落ち葉を踏みて天竜の流れを下にしばらく歩く

船はいま峡に入りたり両岸のそばだつ岩に茂るアカシヤ

市田駅に天竜五葉と云うありき針長くして濃きみどりなる

九十六人のみたましづめて成りしと小佐久間ダム見る深き想ひに

二十メートル減水の跡明らかなりダム巡らせる石垣の上に
by hahanamiko | 2010-01-11 23:04 | 雑詠

昭和三十二年 五月号


己がじし謂ひたきこと謂ひあいてむなしき刻をすごしけるかな

鯉のあらいわかさぎのフライ蜆汁湖畔の宿の食膳にあり



笛吹のゆるき流れにうつりたり枯れたる葦と草を食む牛

山々はうす紫にかぎろひて芽生えそめたる和らぎに充つ

要害温泉の三階の窓より眺めたる山のなだりの紫つつじ







信仰とは己を正すことなりと亡父は常に諭し給ひぬ
by hahanamiko | 2009-08-03 00:07 | 美知思波
ー生更先生の想いでー

蕗のとう火鉢に焼きてそのままに食ぶるがよしと師は云うましき





去年の実を幾つかつけし無花果の若木がみゆる隣家の庭に

つづみ打ちて声に入りくる万歳は三河の国の夫婦なるらし





ー  婦人会研修旅行にてー

清姫の蛇身がふっと浮かびきぬ増上寺の鐘仰ぎいるとき
by hahanamiko | 2009-08-03 00:02 | 美知思波