昭和三十六年 七月号

風吹けばみかんの花が匂ひくるリフトに乗りて山をゆく時

十二人が二列に並び綱を引く久能山よりみゆる浜辺に

切妻のわらぶき屋根は倉庫とぞ足高き台の上に建てらる




摘果しつつりんごに袋かけてをり肩も痛かりくびも痛かり

目ばかり出して顔をつつみし乙女等がよく話すなり袋かけつつ



朝な朝な挿し木のバラをのぞき見る赤く小さく芽のふくらむを



美が森つつじの間わけわけて児等は蕨をさがしゐるなり

所どころ枯れ枝白く見えてゐき天然記念物のこの大つつじ
by hahanamiko | 2012-03-07 21:30 | 美知思波
みずみずしく茂れる羊歯を折りしきて先ず取りいだす握り飯包

天女山の頂に侘ち向かひたる八ツの峰々余りに近し

美し森キャンプ場見ゆ白樺とつつじと赤きバンガローの屋根と

爪の中につまりし土をもてあます二株ばかり鈴蘭堀りて

村に入れば蚕座のにほひしきりにて上簇すでに終わりたるらし

父も母もすでに在まさぬふるさとの家に座りて迫りくるもの

土ほこり捲き上げながらバスは行く登美の高地を藤井たんぼを
by hahanamiko | 2011-10-23 11:34 | 美知思波
双葉町登美の高地をバスは行く赤きほこりを巻き上げながら

山幾つ越せる峡に村ありて段なせる田稲の穂そよぐ

とうとうと落ちて泡立つ滝壺を見下ろす岩に六人座る

木を組し牧場の柵を入りしかばそこはかとなき馬のにほひす

艶やかに毛並み光らせ青は青栗毛は栗毛の仔がつづきたり

とりどりの花乱れ咲き目の限り花園をなすここのなだりは

頂の大いなる岩に侘ちてゐて手を振る順子の赤きブラウス

野辺山に近き頂より山独活の花が咲きをり白くこごりて
by hahanamiko | 2011-09-15 00:06 | 美知思波

昭和三十三年五月号

濠に面して散り残りたる一樹ありその木の元にまろく座をしむ

旗印も毛槍も金具光らせて調えられぬ神殿の前

指先を緑に染めて外苑の芝生の土筆積みにけるかな

畠中に侘ちていませる地蔵尊白き涎掛け幾枚もして

麦青き甲斐の平らを一望に岩に座りて昼の飯食す

黙々と岩に音立つる四人ありここは片山石切り場にて

水澄める小川の底に白き腹見せて沈めり鮒が鱒が

下肥のにほひしてゐる畑あり玉葱のうね青々として

午前五時漸く夫は帰り来ぬ重油焚く村めぐりめぐりて

霜害対策甲斐なかりしと手袋ぬぎつつ夫はぽつりと云えり
by hahanamiko | 2011-02-27 23:44 | 美知思波

蜜柑の皮ひとつ

山吹の根株のかげに見つけたり二輪咲きたる紫すみれ

蜜柑の皮一つ浮かべてゆるやかに流るる川の岸を行くなり

荒川の洲が耕され青々と麦か菜種か育ちゐるなり

総会の準備ようやくととのいて恙なく任期終えたる我等
by hahanamiko | 2011-02-21 15:12 | 雑詠

雲峰寺

老杉の間の石段百五十登りてそこに仁王尊存す

檜皮ぶきの屋根なだらかなる曲線を仰ぎてしばし本堂の前

天然記念物桜の巨木花あらば見事なるべし庭をうずめて
by hahanamiko | 2011-02-11 16:00 | 雑詠
やわらかく桑の萌へたる山畠のなかを登れリ金子峠に

山畠の細き路ゆき桑の下に半開きし蕨折りたる

甘酢ゆき匂ひただようひとところ山つつじは紅ひの色に咲き咲く
by hahanamiko | 2010-01-10 22:52 | 雑詠

昭和三十二年 六月号

ウエットかドライか知らずかにかくに己の意志をのぶる娘ら



高々と帯を結びし彼の人も吾と同じき五十歳にて



笛吹の土手をましぐらにそれゆきて桑の畑のみどりに入りぬ

参道の長きを行きて檜はだぶきの屋根の美しき宮に詣づる
by hahanamiko | 2009-10-30 18:58 | 美知思波
ー上野姉宅にてー

訪へば葡萄剪定にいそがしく鋏をならし君はいませり            




ー生更先生と願成寺にてー

おでんの匂いする韮崎の路地をゆき出はずれしところ展く稲田が

釜無の音がうしろに遠くなりて坂を登ればすぐ願成寺

古びたる本堂の内に拝したり願成寺国宝如来三尊
by hahanamiko | 2009-08-02 23:49 | 美知思波


深草の観音像は岩山の岩をうがちし中にまします


親子六人山に登りて云うことなし生のけわしさしばし忘れむ
by hahanamiko | 2009-08-02 23:16 | 美知思波