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母の詠草


by hahanamiko

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昭和三十六年 一月号

笹子隋道越えたるところ雪ありてコートの衿に吾が手が動く

狭山の茶は麦の畑を廻りゐる畦づくりにて広々つづく

唄の声すでにやみたるバスの中そこここにいびき聞こえはじめつ

浅川にて買ひしとろ芋ぶら下げて夜更けの町をひとり帰りく



先生も嬉からまし奥様も嬉からまし並びいまして



むつき百枚小さき着物も縫ひはじむやがて生まるる初孫のため

大根を朝な朝なにひろげ乾す南向きなるトタンの屋根に
by hahanamiko | 2012-02-16 23:19 | 美知思波

昭和三十五年 三月号

二た昔過ぎたる今日を相逢ひてともに変わらぬ事をめだあふ

本よめば眼疲れて頭痛する明け暮れにして半年をすぐ

友達みな進学に忙しくをらん時トランプするに余念なき娘よ

ジェスチャーに笑ひこけたる時過ごしみかんをもちて部屋に引きあぐ

七転び八起きのだるま棚にのせめざめし床に今朝も見てをり

一と商売すまねば食事にならぬらしその間に吾も忙しく縫ふ
by hahanamiko | 2012-02-05 20:23 | 美知思波
数の子もたこも刺身も高くして吾らの家に正月がくる

りんご箱に米菓子りんご餅などと詰めて荷造り漸く済みぬ

自転車に乗りて年始に来ましたり八十になりて若き舅上

睡蓮の陰に沈みてゐる金魚見てゐたる時動かざりけり

独り居の昼は安けし餅三切れ焼きて厨にひるげを済ます

昨の夜舞ひし風花白々と庭の冬菜の上に残れり

笑い声たかく上がりぬ先生の作りし歌に酷評ありて
by hahanamiko | 2011-10-18 22:58 | 美知思波
山査子のつぶら実が陽に光をり盆栽棚の松に並びて

光沢良き茶碗の白に午後の日のうつらふ様を見つつ久しむ

彼岸花群れなして咲き居たりけり葡萄棚のしたの小路に

勤務評定反対の署名もとめゐる街角を人等さけて過ぎ行く

ブロックに塀ととのえて吾が家の庭の隅々明るくなりぬ

虫食ひし土台木割りて風呂を焚く古りたる塀を壊せし夕べ

訪ね来し子等二十人かりそめの教師洋子にまつわり唄ふ

若き情熱かたむけて子等を教えつつ四十日たてば別れねばならぬ

胸深くくづをるるもの持ちてあらむ産休補助の教師洋子
by hahanamiko | 2011-10-16 20:32 | 美知思波

昭和三十三年

まだきより田に響きくる拡声器なべては水のことばかりなり

焼け畠に七月の陽はきびしくてかさかさと鳴るもろこしの葉が

二十日鼠のはだら子を畦の上におき殺してがなく見ていたりけり

換金作物転換の話もはらなり乏しき水に田を植えながら

十三時間労働すでに幾旬ぞ鬢も伸びたり日焼けし顔に

毒虫に刺されし足がひりひりと痛みやまざり泥の中にて

雨を待つ人々の願いむなしくて空あかあかと暮れそめにけり

ふやけたる足に小砂利をふみながら暗みそめたる野路を帰る

繭米野菜すべてを人の定める値段にて売らねばならぬ百姓

教職を一筋の道と学びたる若き等の行く手いかにせよとや

職無くば家にしありて良き妻となるべき業にいそしめ洋子

とくほんを両肩にはりひねもすを横たわりいて美知思波を読む

すだれ越しの風を受けつつ式台に蟻忙しく動けるをみる

時折はとどまりて触手振りながら何を探すか黒蟻二匹
by hahanamiko | 2011-09-07 22:42 | 雑詠

昭和三十三年一月号

三毛猫がうづくまりをり白菜を干しひろげたる筵の上に

漬菜終えて塩に荒れたる手を洗ふ夕かたぶける厨の内に

白菜大根人参生姜切りまぜて即席漬けも鉢に漬けたり

学びいる娘と並びいて衣を縫う仕掛け花火の音を聴きつつ

土屋眼科の畑のすみに残りたる枯れほほけたる薄一群れ

積極性なしと笑はば笑うべし吾は争うことを好まず

樹の上に鋸鋏持ちゆきて柿剪定にもはらなる夫

夫の切りし柿の小枝を束ねをり冬日の当たる裏庭にいて
by hahanamiko | 2011-02-12 23:17 | 美知思波
ー家の新築工事はじまるー

土管いっぱいに土が詰まりていたりけりもぐらもちの仕業なるらし

ふつふつとたぎりし汁がとびつきぬきんとんを練る我が手に顔に





新生活運動の表れならむ年賀客少なきままに七日過ぎたり





初めてパーマネントをかけし時洋子は室にこもりいるなり

嬉しげに並びて立てり左前に晴れ着を着たる智子順子
by hahanamiko | 2009-08-02 23:55 | 美知思波