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母の詠草


by hahanamiko

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昭和三十五年 六月号

庭石のくぼみの水を折々に動かして雨降り止まぬなり

大でまり小でまり今を盛りにて雨降る庭を明るませおり

京島式と先生は笑ひ給ふなり葉に開きたるわらびを採るに

吉田先生の手入れ見事に庭石の其の一つだにおろそかならず


姉上のえらび給ひし打ちかけぞ金糸の鶴の縫ひ盛り上がる

洋子の手かすかに震えゐたりけり巫女のささげし杯受けて

愛子を迎え洋子嫁がせ慌しく過ぎてしまえり二ヶ月あまり


耳近くせせらぎの音も聞こえゐて君が新居に陽の光みつ

桑畑穂麦の畑桃畑君が家居をめぐらするもの
by hahanamiko | 2012-02-11 13:43 | 美知思波
一すじの道をつらぬき給いたる喜びの日ぞ吾も侍らん

折々は眼鏡ぬぐいていましたり祝いの席の生更先生

甲斐の文化いよいよたかめさせ給え百歳までもながらへまして

彩なして紅葉燃え立つ地獄谷ロープウェーの窓よりのぞく

石垣作りの苺は花の盛りにて丘の日当たる斜面に続く

さやさやと風吹き亘る朝の山蜜柑は実る頂にまで

空と見し山のかなたは海なりき遥々として白く光れる

羽衣の松を左に美保の海波打ち返す浜を歩めり

海原を薄紅に染めなして日はかたむきぬ蜜柑の山に
by hahanamiko | 2011-10-18 22:33 | 美知思波

昭和三十三年二月号

逝きまして十有余年教え子の手にて成りたる歌集「老松」

眼差しの亡父に似ませるみ写し絵笑みていませり其の巻頭に

脇門のくぐりの鎖響かせて夜を訪ひたることもありけり

方眼紙今宵も出して診療室の図面引きをり夫と佑幸

うから六人映画を見むと月まろく風の冷たき町を行くなり

さわやかに山脈の線うかびたり夕明かりする空をくぎりて

筆談の煩わしさにも堪えましてさきくしいませ江利川先生

三百の賀状来たりぬその中に宛名のみなる一枚もあり

青銅の裸枝差し交わす空の淵に影をもたざる雲の寂けさ

緩々と行く我にすぐ追いつきてその歩きざま夫はしてみす

夜更けて看護婦ら物を洗ふなり物を洗ふに必ず唄ふ
by hahanamiko | 2011-02-14 23:27 | 美知思波

新田様ご婚礼祝いにて

新婦より受けたる酒にほほ染めて交々踊り交わりを歌う

君が家の倖ひらく日ぞ吾もまたおぼつかなくも踊る
by hahanamiko | 2010-03-01 14:30 | 雑詠
ー生更先生の想いでー

蕗のとう火鉢に焼きてそのままに食ぶるがよしと師は云うましき





去年の実を幾つかつけし無花果の若木がみゆる隣家の庭に

つづみ打ちて声に入りくる万歳は三河の国の夫婦なるらし





ー  婦人会研修旅行にてー

清姫の蛇身がふっと浮かびきぬ増上寺の鐘仰ぎいるとき
by hahanamiko | 2009-08-03 00:02 | 美知思波
ー浅井校長逝去(伊勢学校長)ー

豪放磊落の内にひそめたる責任が先生の命縮めたるらし

うつつなき内にもつぶやきいましけり学校のこと生徒らのこと

強き風に講堂の屋根なりやまず読経の声ひびくさなかに

石川教頭の弔辞幾たびか声をのみつつようやく終わる

修道尼二人乗りきて吾が前の座席に座るまなこふせつつ





しきたりの古きをわらい言いひつのる娘よ汝も大人にあらず





ー母喜寿の祝いー

七十人のうから集いて老母の喜の字を祝ふ常盤ホテルに

赤き蒲団二つ重ねて座りたる母のからだの小さくし見ゆ



ー佑幸大学卒業ー

医を学びし佑幸漸く帰り来ぬ六ヶ年精勤の賞状持ちて



ー洋子大学卒業ー


紋服に裾長き袴着けて立つ洋子が卒業の晴れ姿なり






幾本かの白髪を抜きていたりけり夫や娘の出掛けたる後





二十五センチ積りし雪が南天を地に伏せしめていまだやまざる
by hahanamiko | 2009-08-02 23:59 | 美知思波
ー上野姉宅にてー

訪へば葡萄剪定にいそがしく鋏をならし君はいませり            




ー生更先生と願成寺にてー

おでんの匂いする韮崎の路地をゆき出はずれしところ展く稲田が

釜無の音がうしろに遠くなりて坂を登ればすぐ願成寺

古びたる本堂の内に拝したり願成寺国宝如来三尊
by hahanamiko | 2009-08-02 23:49 | 美知思波

昭和二十八年八月 

千代田湖にてH先生事故死


四年前君を死なせし千代田湖のしずけきさみつつこころみだるる




夕立に波立ちさわぐ日なりけりこの湖に君を死なしむ
by hahanamiko | 2009-08-02 23:17 | 美知思波