三十七年 七月

ー順子大学卒業記念に北海道のたびー

来む春は学びを終わるかたみとぞ北海道を旅ゆく順子

今日ははや津軽の海をゆくならむ順子等の上につつがあらすな

北大に学ぶ従兄も訪ね来よ再びは行くこと難き旅なり

地図の上に夫としるしを付けてゆく娘の旅先を話しながらに

すばらしい函館山の眺望に気分上々と順子の手紙




母子家庭行楽の日ぞよりそひて母と子がゆくつつじのなかを

先永き独りの生きを思はする若く美しき母のいくたり






by hahanamiko | 2017-07-02 19:59 | 美知思波

三十七年 六月

かかるきびしき生活の中に歌ありて道路工夫の君逝き給う

いと貧しき家にして人情のこまやかなる葬りの席に吾等連なる

盲目なる夫が逝きて残されし半身不随の妻とその子等

この家の長男のぬし山国屋の世話ゆき届き

仏壇に香ゆらぎいて片側にマリヤの御像祀られており

親戚の人々それぞれに不自由の人を労わり力づけをり



母の日を祝ひし手紙智子より届きぬそこばくの金入れありて





by hahanamiko | 2016-11-03 21:46 | 美知思波

三十七年 二月

奔放にふるまふ若き等と居りて時にたじろぐ我の心が

ベビーサークルつたわり歩く英幸の足つきとみにたしかになりぬ

石の間におもとの紅実のぞきいる雪かかむとて出でてる庭の

物干しの雪掃き下ろしむつき干す正月二日の吾が初仕事

晴れ着きて智子順子が並びたり帯が苦しいと笑ひ合いつつ

湯上りに真紅のガウン召し給うギブソン夫人若々として

抱きやれば機嫌よく笑ふ孫和子堅きコルセットに脚開かれて

編みおきしピンクの上着きせやらむ今日帰りゆく孫の和子に

ひと色に装ひし乙女あふれたり成人式会場県民会館

純潔の貴さを説きし知事の祝辞うかちし言に笑も沸かせて

腹を裂きわたをぬきてもまな板になほ跳ねてをり源五郎鮒

串にさし火に焙りたる三度にていよいよ今日は甘露煮にせむ

隣家より賜びたる源五郎ぶな三尾鍋に余れりその尾と頭
by hahanamiko | 2014-12-06 21:27 | 美知思波

昭和三十七年 一月

もろこしと柿と乾されてゐたりけり山ふところの農家の軒に

外堀の一部は蓮の田になりて枯葉が浮かぶさひたる水に

ちょうなあと黒く光れる太柱我の目につく天守閣一階二階

這い上る敵を落さむしかけとぞ堀にそひたる石おとし穴

諏訪の湖の岸に寄りたるあくたあり浮かびて動くゴムまりふたつ

千代田湖に釣りし若さぎ賑やかに揚げてゐるなり若き夫婦が

浅利汁呑みつくしたる鍋底に白く小さき蟹の残れる

背の君にそひてつつましく侘ち給う花束受くる露木夫人が
by hahanamiko | 2014-12-06 21:03 | 美知思波

昭和三十六年 三月号

炬燵にて苺を食ぶるこのおごり思ひつつさじにつぶしゐるなり

ようやくに祝辞終わりてふた取りし吸い物は既に冷たくなりをり

浩宮を抱きまゐらせる美智子妃の写真に見入る風吹く街に

うつつなく車ばかりを見てゐたり岡島前に人を待ちつつ

信濃路を亡父と旅ゆく夢なりきさめてまざまざと想ひだしをり
by hahanamiko | 2012-02-23 16:20 | 美知思波

昭和三十六年 二月号

レディーファーストの良きありかたを見たりけりギブソン夫妻と三日居りつつ

もてなしの貧しさ云はず暖かき雰囲気よしと喜び給ふ

日本の風呂も布団もはじめての夫人の眠り浅くいまさむ

英国の王室につながり近しと云ふ気品自らなり夫人の立ち居



買い物袋投げ出して口をおさへたりラケット振りし子の傍らに

我が肩に手をおきて子等はのぞきこむゴメンゴメンとかたみに云ひて



岡島の屋上に子等の遊ぶさま良く見ゆるなり歌会の席に

詠草を前に頭をかしげをり五首を選ぶがむずかしくて



葬りの式おごそかなりき父子二代仕へし宮の其の広前に

闘病の永きに堪へし君にしてあはれ過ちに逝きませしとは
by hahanamiko | 2012-02-19 17:25 | 美知思波
雨にぬれて色まさりたる山うるし黄に染む山のところどころに

千曲川にそひて過ぎゆく佐久平稲はなびけり見わたすかぎり

戸倉ヘルスセンター県営にて年間数千万の赤字なりとぞ

川中島合戦の址と指ささる広き河原に薄がそよぐ

しづしづと聖が歩む両がわに数珠受けむとて人等うづくむ

内堀に影うつしたる天守閣五層がゆるる波のまにまに

日本一の生糸の町とうたはれし岡谷に製糸場減るばかりとぞ



薬まきて田の草は一度も取らずといふ稲実る田の畦に立つなり

杭に打つ木の年輪が細かくて三十年は経ちてゐるなり



植木市をひと廻りしてほしきものあれこれと見つなんにも買はず

二時間のあひだつくづく見て廻る花器も香炉も皆ほしきもの



奥みたけより夏に採り来し楓なり庭の陽なたにくれなゐなせる



昇り竜下り竜のこと語り合ふ朱色鮮やかなる拝殿に

眼つぶりて祝辞を聞けり拝殿の円座といふに吾ら座りて

手に付きし金粉みつつ思ひ出つ父が賜いたるみたけの鈴を



街頭に公明選挙のビラ配る色々の事思ひつづけて
by hahanamiko | 2012-02-16 00:15 | 美知思波

昭和三十五年 十月号

箸持ちて吾が家の夕げ食し給ふケンブリッジ大学教授ギブソン博士

枝豆を一粒一粒むきながら食べ給ふなりギブソン博士


あら草の丈なす茂り荒川の岸を中洲をうめつくしおり

築山の松かたむきて池に這ふこの趣も台風のため



一合の酒二人にて分ち呑み機嫌がよろし夫と息子と

底に手をつきて泳ぎの真似しつつ吾ら六人湯に遊びゐて
by hahanamiko | 2012-02-14 13:10 | 美知思波

昭和三十五年 九月号

ひりひりと裸のうでが痛むなり真陽照りつける笛吹河原

湖尻よりきほひ下れる水勢のしずかになりて町の中ゆく

美知思波七月号巻末に貼りおかむ君がみ歌のひとすじの道

巨大なる機械はすべて被われて唯大いなる音がとどろく

姑上にいただきしと云ううす衣の濃紺が匂ふ朱色の帯に
by hahanamiko | 2012-02-14 13:01 | 美知思波

昭和三十五年 八月号

畔道にござ敷きならべひろげ食す流るる水に足をひたして

畦草のしげりをぬきて彼岸花ところどころに咲きいでにけり

稲の色青み来たりて乱れ葉のゆれやわらかに朝の風ふく

水際に麻菰の茂るひと所夕陽は光る波のまにまに

一枝に五つの蕾咲きそめて壷に重たし山百合の花

紺がすりに赤き帯して乙女等が田植えせりけり二十年前は

音たてて流るる水に沈めたるジュースを畦に侘ちて飲みたり



いづれ良しと日定むべき右左みなそれぞれの理わりありて

友情を打算にかへよと云ふ人あり吾は黙して帰り来にけり

声荒く満座に人を辱しむいつもながらの横車にて

しみじみと独りなりけり集まりて人等の話題聞きながらゐて



吾が呼べば物憂げにジャック首上げて尾を動かせり牡丹のした

岸さんの血が絨毯に染みたりと云ふ記事を読む顔よせ合ひて
by hahanamiko | 2012-02-13 15:32 | 美知思波