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母の詠草


by hahanamiko
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昭和三十五年 五月号

三原山にて

一木も一草もなく荒々と溶岩の起伏つづく裾原

楢山節考想ひつつ見てゐたりけり禿山に烏のむれだつさまを

溶岩の起伏をこへてはるかなる波のうねりの見へにけるかな
# by hahanamiko | 2012-02-11 13:30 | 美知思波

昭和三十五年 四月号

バナナの房堂々と垂りてゐたりけり新宿御苑熱帯館に

とりどりの葉をこそ愛でむ熱帯の植物はいろ艶やかにして

ビロードカジラと云ふがありけり岩を這うその葉の色の深き紫

珍しき蘭の花あり袋なす花びらに石を入れしは誰ぞ

池を渡り長き林の中をゆく心合ひたる友と並びて



母の亡き三人の孫を育くみし叔母上の命いまやあやふし

四十年独りを守りこの家に生き給ひたる叔母上なりし

刀を捨て今井の郷を開きしと云ふ遠祖の墓もあるなり



己一人散りて幾人の花開く其のよろこびを夫は云ふなり
# by hahanamiko | 2012-02-10 17:22 | 美知思波

昭和三十五年 三月号

二た昔過ぎたる今日を相逢ひてともに変わらぬ事をめだあふ

本よめば眼疲れて頭痛する明け暮れにして半年をすぐ

友達みな進学に忙しくをらん時トランプするに余念なき娘よ

ジェスチャーに笑ひこけたる時過ごしみかんをもちて部屋に引きあぐ

七転び八起きのだるま棚にのせめざめし床に今朝も見てをり

一と商売すまねば食事にならぬらしその間に吾も忙しく縫ふ
# by hahanamiko | 2012-02-05 20:23 | 美知思波

・・・・・

茶褐色の柱のつやを見てゐたり風邪にて寝ている床の中にて

とろろ芋摺りつつ想ひ浮かぶなり山に掘ります生更先生

スキー負ひていそいそと洋子いでゆきぬ嫁すべき家のまどひに入りて

志賀高原の雪にまろびてゐるならむ夫となるべき人と並びて

雪焼けのほほあからめて帰り来ぬ私だけがころびましたと

全学連暴動の記事読みつつぞその父母の痛みを想ふ

風つのる夜半の街に着ぶくれて夜警の夫はいでてゆきたり

さんざめく笑いの中に笑はざる人二人おり席を並べて

天井の焼夷弾の穴寝てゐつつ眼ひらきて見てゐたりけり
# by hahanamiko | 2012-02-05 20:13 | 雑詠

成人式に参加して 

着かざりて乙女等は何を思ふらむ華やぎ満てる成人式場

表面の美を云ふなかれその瞳の輝きを見よとたれか云ひたり

母吾等の合唱の声つたなくも君等をほぐと聞き給ふべし

成人を寮舎にありて迎えたる智子を想ふこの式場に

この式に智子は居らず成年を寮舎にありていかに迎えし
# by hahanamiko | 2012-02-05 20:00 | 雑詠