浴室の窓より見ゆる釜無川ゆるくくねりて南にむかふ
焼松茸に青き松葉がそへてあり柚子の酢に食ふその一皿を
門脇に店しつらへて色々のもの売り給ふ未亡人君は
幾百の俵収めし塗りごめの土蔵むなしく閉ざされてあり
根こそぎに倒されしとふ柿の木にここだ色づく富有柿次郎柿
奥庭の泉水は水涸れしまま幹太き松におほはれてあり
背を丸く炬燵にいます姑君が吾が祖母のことしきりに話す
ひとりなる君が愛娘によきゑにし結ばれにけり祝はざらめや
ふろしきに重たくつつむ富有柿いただき帰る夕づく町を
台風の予報しきりなり瀬戸の海ふねゆく娘等に恙があらすな
焼松茸に青き松葉がそへてあり柚子の酢に食ふその一皿を
門脇に店しつらへて色々のもの売り給ふ未亡人君は
幾百の俵収めし塗りごめの土蔵むなしく閉ざされてあり
根こそぎに倒されしとふ柿の木にここだ色づく富有柿次郎柿
奥庭の泉水は水涸れしまま幹太き松におほはれてあり
背を丸く炬燵にいます姑君が吾が祖母のことしきりに話す
ひとりなる君が愛娘によきゑにし結ばれにけり祝はざらめや
ふろしきに重たくつつむ富有柿いただき帰る夕づく町を
台風の予報しきりなり瀬戸の海ふねゆく娘等に恙があらすな
▲
by hahanamiko
| 2012-01-24 18:14
| 美知思波
診療室に流れこみたる雨水をバケツにしぼる二時間余り
落ち柿を拾ふ幼なの声すなり台風やみし朝まだきより
欠け瓦山と積みたる所よりほそぼそとしてこほろぎきこゆ
いはれなき罵りの声聞きてゐてうつむきしまま動かざる君
落ち柿を拾ふ幼なの声すなり台風やみし朝まだきより
欠け瓦山と積みたる所よりほそぼそとしてこほろぎきこゆ
いはれなき罵りの声聞きてゐてうつむきしまま動かざる君
▲
by hahanamiko
| 2012-01-22 23:39
| 美知思波
陽あたりよき部屋に産着を縫ひいます美知思波歌稿持ちゆきしとき
柿の皮くるくると膝に落としゆく君が手先の動き見てゐる
義歯にて不器用に食ぶる次郎柿甘ければ又手を伸ばすなり
君が庭より分かち給へるガーベラの花咲きつぎて夏となりけり
夕さればビニールかけてガーベラの残りの花を守らむとする
鳶二つしばらく舞ひてゐたりしが連れ立ちて消ゆ西の雲間に
天の川白々見へて満天の星座きらめくプラネタリューム
かすかなる鼾きこえぬ仰向きてプラネタリューム見ていし時に
この庭に智子も居らむ青山学院に添ひたる道をバスに過ぎたり
友より賜ひしきんせんか並み植えにけり診療室の前のひだまりに
柿の皮くるくると膝に落としゆく君が手先の動き見てゐる
義歯にて不器用に食ぶる次郎柿甘ければ又手を伸ばすなり
君が庭より分かち給へるガーベラの花咲きつぎて夏となりけり
夕さればビニールかけてガーベラの残りの花を守らむとする
鳶二つしばらく舞ひてゐたりしが連れ立ちて消ゆ西の雲間に
天の川白々見へて満天の星座きらめくプラネタリューム
かすかなる鼾きこえぬ仰向きてプラネタリューム見ていし時に
この庭に智子も居らむ青山学院に添ひたる道をバスに過ぎたり
友より賜ひしきんせんか並み植えにけり診療室の前のひだまりに
▲
by hahanamiko
| 2011-11-20 21:46
| 雑詠
青銅の大き鳥居を入りゆけば鳩は群れいる庭いっぱいに
條立てて清められたる玉砂利に落ち葉しきりなり
百五十人の遺児寂として昇殿す神殿風冷たい朝
父を奪った戦争が憎しと声をのむ遺児代表の言葉に哭けり
秋桜咲きてゐにけり靖国の宮の内苑ふかきところに
かわらけに神酒つぎくれるうら若き巫女の手白く美しかりき
條立てて清められたる玉砂利に落ち葉しきりなり
百五十人の遺児寂として昇殿す神殿風冷たい朝
父を奪った戦争が憎しと声をのむ遺児代表の言葉に哭けり
秋桜咲きてゐにけり靖国の宮の内苑ふかきところに
かわらけに神酒つぎくれるうら若き巫女の手白く美しかりき
▲
by hahanamiko
| 2011-11-20 21:25
| 雑詠
みはるかすまろき山々若草の色に連なる十国峠
篠山の笹に座りてはるかなる相模の海の光れるを見つ
ヨット三つ動かぬ如し芦ノ湖をめぐらす青き山背景に
銀鼠の泥の池なり沸々と百三十度たぎりあわたつ
硫黄の煙這ひゆくところ樹々の根の白く黄色くあらわなりけり
水な底の岩のまにまに見えてゐる黒きパンツが白き足裏が
缶詰のオレンジジュース沈めたり青くよどめる滝の清水に
汗垂りて人参の草とりて居し妹に並び草むしるなり
作業衣に手甲つけて畑にゆく一人前の農婦のごとく
一畝に三条のみどり並びたり草とりをへし人参ばたけ
篠山の笹に座りてはるかなる相模の海の光れるを見つ
ヨット三つ動かぬ如し芦ノ湖をめぐらす青き山背景に
銀鼠の泥の池なり沸々と百三十度たぎりあわたつ
硫黄の煙這ひゆくところ樹々の根の白く黄色くあらわなりけり
水な底の岩のまにまに見えてゐる黒きパンツが白き足裏が
缶詰のオレンジジュース沈めたり青くよどめる滝の清水に
汗垂りて人参の草とりて居し妹に並び草むしるなり
作業衣に手甲つけて畑にゆく一人前の農婦のごとく
一畝に三条のみどり並びたり草とりをへし人参ばたけ
▲
by hahanamiko
| 2011-11-09 18:52
| 美知思波
十匹の金魚つぎつぎ死にゆきて残りしひとつ鉢に動かず
ふんわりと富士にかかれる白き雲荒れたる国にかかわりもなく
地の惨禍黒くしずめる山梨の空にさやけし十日の月は
おそろしき自然の力知らしめて台風は去りぬ忘れしごとく
台風去りし盆地の朝を旋回するヘリコプター飛行機屋根すれすれに
屋根に這ひて割れし瓦をなほしおり又降り出せる小雨のなかを
ふんわりと富士にかかれる白き雲荒れたる国にかかわりもなく
地の惨禍黒くしずめる山梨の空にさやけし十日の月は
おそろしき自然の力知らしめて台風は去りぬ忘れしごとく
台風去りし盆地の朝を旋回するヘリコプター飛行機屋根すれすれに
屋根に這ひて割れし瓦をなほしおり又降り出せる小雨のなかを
▲
by hahanamiko
| 2011-10-28 18:50
| 美知思波
バスに行く富士二合目の崖下に既に葉となりしうどの幾株
こけ桃の花の可憐をいひあいてむらがり咲けるかたはらに侘つ
ふり仰ぐ頂は澄みきわまりて雪渓に陽のかがやくを見つ
所々に紙屑ありて大いなる蝿群がれり小御嶽あたり
松葉酒のびんが並びてゐたりけり老人ホームの庭の陽なたに
養老院にて結ばれたりし夫婦とぞ一つの部屋にひっそりと居き
子供らの歓声あがれる夫の土産卓上にある一房のバナナ
こけ桃の花の可憐をいひあいてむらがり咲けるかたはらに侘つ
ふり仰ぐ頂は澄みきわまりて雪渓に陽のかがやくを見つ
所々に紙屑ありて大いなる蝿群がれり小御嶽あたり
松葉酒のびんが並びてゐたりけり老人ホームの庭の陽なたに
養老院にて結ばれたりし夫婦とぞ一つの部屋にひっそりと居き
子供らの歓声あがれる夫の土産卓上にある一房のバナナ
▲
by hahanamiko
| 2011-10-23 11:46
| 美知思波
みずみずしく茂れる羊歯を折りしきて先ず取りいだす握り飯包
天女山の頂に侘ち向かひたる八ツの峰々余りに近し
美し森キャンプ場見ゆ白樺とつつじと赤きバンガローの屋根と
爪の中につまりし土をもてあます二株ばかり鈴蘭堀りて
村に入れば蚕座のにほひしきりにて上簇すでに終わりたるらし
父も母もすでに在まさぬふるさとの家に座りて迫りくるもの
土ほこり捲き上げながらバスは行く登美の高地を藤井たんぼを
天女山の頂に侘ち向かひたる八ツの峰々余りに近し
美し森キャンプ場見ゆ白樺とつつじと赤きバンガローの屋根と
爪の中につまりし土をもてあます二株ばかり鈴蘭堀りて
村に入れば蚕座のにほひしきりにて上簇すでに終わりたるらし
父も母もすでに在まさぬふるさとの家に座りて迫りくるもの
土ほこり捲き上げながらバスは行く登美の高地を藤井たんぼを
▲
by hahanamiko
| 2011-10-23 11:34
| 美知思波
木がくりの峪あひの水にごりいて雨しきりなり笹子の道は
犬吠崎の灯台の灯を窓に見る磯屋ホテルの二階に居りて
潮騒の音が聞こえてゐるなりき夜すがら浅き眠りのなかに
なめらかなる石重なれる磯に侘つ折々波に裾をぬらして
石を上げて小さき蟹を追ひたりき朝の飯待つ其のひとときを
瑞々と若菜萌えたち丹の色の鳥居はえたり鹿島神宮
七不思議と云へる池あり鹿島神社の森の奥戸に澄みきわまりて
水郷はすでに田植えが終わりゐて白鷺歩む植田の畦を
ゆるやかに水流れゐて小さなる舟おかれたり真菰のなかに
バスに行く北浦の湖の長き橋右手に鴨の遊ぶを見つつ
犬吠崎の灯台の灯を窓に見る磯屋ホテルの二階に居りて
潮騒の音が聞こえてゐるなりき夜すがら浅き眠りのなかに
なめらかなる石重なれる磯に侘つ折々波に裾をぬらして
石を上げて小さき蟹を追ひたりき朝の飯待つ其のひとときを
瑞々と若菜萌えたち丹の色の鳥居はえたり鹿島神宮
七不思議と云へる池あり鹿島神社の森の奥戸に澄みきわまりて
水郷はすでに田植えが終わりゐて白鷺歩む植田の畦を
ゆるやかに水流れゐて小さなる舟おかれたり真菰のなかに
バスに行く北浦の湖の長き橋右手に鴨の遊ぶを見つつ
▲
by hahanamiko
| 2011-10-22 21:08
| 美知思波